インクライン
2024.01.01 (月)

インクライン2024.1月号を掲載しました。

開始日:2024.01.01 (月)

待遇、成長、そして誇り。~合理化テキストの中に~ 会長 佐藤 正行

新年おめでとうございます。昨年は多くの会員のご尽力により、近畿京滋会がさらに前進し、そしてより力強い地域会となることができました。心より感謝申し上げます。本年も全国会方針最終年の総仕上げに向けて更に努力してまいります。皆様と共に「巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援する」取り組みを活性化させ、関与先の発展と事務所の経営基盤の強化につなげてまいります。

10月の全国会正副会長会の席で坂本会長が会計事務所の採用難にともなう経営危機のお話を次のようにされました。「上場企業が計画通り採用を行うことができないこの状態のなかで会計事務所に良い人材が来る確立は極めて低い。会計事務所は求人に頼る経営から職員定着に向き合う経営に転換しなければならない。デジタル化を加速させ、デジタル化の中での巡回監査から4大業務を展開し、高付加価値事務所を構築することにより職員の待遇を上場企業にそれに近づけ、同時に職員のやりがいを醸成する。この会計事務所像を実現させることが今後の全国会のテーマである。」また京都で開催された原点の会でも職員定着の話となり、高橋宗寛が「私は経営者ではないのでよくわかりませんが、職員定着の要諦は【待遇、成長、そして誇り】であると思います。」と述べられました。

「待遇、成長、誇り」を充足する事務所とはどういう事務所なのか、そしてどれから手を付ければよいのか?宗寛和尚の言葉を聞いて熟考しました。私は「成長」の仕組みづくりがスタートであると考えました。事務所経営に職員が成長する仕組みを定着させ、成長した職員に見合う業務を提供しそして関与先から感謝され、その好循環のなかで従業員一人当たりの売上高を高めていく高付加価値事務所を構築し、好待遇をもって職員の成長と誇りに応えていく。この一連の制度設計と組織経営を実現するのが所長の役割であると。

近畿税理士会の実態調査では従業員(間接業務人員を含めた総人数)一人当たりの売上高の平均は700万~800万、TKC近畿4地域会の実態調査でも同じような結果が報告されています。しかしながら全国のTKCモデル事務所の従業員一人当たりの売上高は少なくとも1300万円、多ければ1500万をこえています。この大きな格差は「巡回監査」「巡回監査と経営助言」「巡回監査と4大業務」が事務所の標準業務として定着しているか否かに過ぎません。TKCの職員研修は例を見ないほど充実しています。この宝の山を活用していきましょう。そして研鑽して成長した職員が関与先でその成果を実践できる事1務所体制を構築していきましょう。この事務所体制の構築にはTKCシステムのフル活用が大きな後押しをしてくれます。

まだカラーテレビが一般的に普及していない昭和44年に「電算機利用による会計事務所の合理化テキスト」のなかで飯塚毅初代会長は次のように述べられています。

一般の会計事務所は時代の流れに取り残されて没落又は消滅の運命をたどる外はない。

何故か。その理由は次のとおりである。(8項目中3項目を抜粋)

①大多数の会計事務所所長が、この電算機時代にソロバンを主力とする古い事務処理方式を漫然と続けていて、現実の恐ろしいほどの条件変化を正視しようとしていない。

②極端な人手不足と人件費高騰のために、会計事務所の職員補充が困難となり、それに加えて、人力に頼る会計事務所の生産性が低く、業務の水準はやむなく低下し、事務所の経営は職員の低賃金に頼らなければ採算割れになっていく他はないからである。

③顧問先たる中小企業も人手不足の結果として、機械化を推進せざるを得ない羽目に立ち、それらの結果として、会計事務所は申告書作成の単なる代書人階層に転落してゆく外はないからである。

①は、この自動化・連携の時代に「手入力を主力とする記帳代行業務を漫然と続けていて」と読み替えることができます。限定的なTKCシステムの活用という事務所の趣向を打開する必要があります。②③は現在まさに我々に突き付けられている課題であり、放置すると出口の見えない迷路のなかに取り残されてしまうでしょう。飯塚毅初代会長は50年以上前から会計事務所経営の本質を見据え、解決方法を提言されていいました。この文章をお読みいただくと「職業会計人の職域防衛と運命打開」の職域防衛はコンピューターからの職域防衛であると理解いただけると思います。

飯塚毅初代会長の方向性を信じて「合理化テキスト」により地道に巡回監査を柱とした事務所経営を実践されてきた会員が前述の全国のTKCモデル事務所なのです。【待遇、成長、そして誇り】高橋宗寛のこのお言葉は、飯塚毅初代会長の方向性の理解が深いがゆえのお言葉であったのかもしれません。

「真の隘路は改革断行の実践意思の有無だけである(合理化テキスト)」

会員の皆様、本年も「働きかけ、分かち合い、共に実践!」地域会の活性化とともに未来へ挑戦していきま し ょ う!