インクライン
2025.01.01 (水)

インクライン2025.1月号を掲載しました。

開始日:2025.01.01 (水)

年頭所感「共に運動した3年間を振り返る」
TKC近畿京滋会 会長 佐藤正行

謹んで新春のお祝い申し上げます。昨年は皆様のご尽力により、地域会が活性化され、更なる前進ができましたこと、心より感謝申し上げます。
関与先の健全性と発展性に全力投球し、税理士の社会的使命を果たし、同時に事務所の経営基盤を強化する「巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援する」3年間の運動方針が終了いたしました。令和4年からの3年間を振り返り、運動の成果と課題を私なりに報告させていただきます

全体として

地域会・支部・委員会が主催する多くの行事が地域会全体の活性化につながり、会員増強で入会いただいた会員はじめ多くの新しい会員の地域会活動への参加そして理念の実践へと、TKC理念の広がりと浸透が大きく前進しました。KPI主要項目について全国トップクラスの実績を挙げられたことから、会員事務所全体の経営基盤の強化が図られたと実感します。又理事会構成メンバーを中心とした率先垂範も活発となり、地域会運営という観点からも次のステージに上がれたのではないかと思います。

3年間の具体的運動

<成果>
①コロナ禍における取組
「㈱TKCの支援による緊急資金繰り支援、政経研究会によるゼロゼロ融資の創設・申告期限の延長等の政府への提言、Webを活用した地域会・支部活動、オンデマンド研修の無償化による生涯研修履修」                                                                 当初はコロナ禍でのスタートでした。㈱TKC・全国会・政経研究会の支援を受けながら、地域会・支部で議論を重ね、コロナ禍においても足を止めずに地域会活動、そして関与先に対する支援を継続することができました。

②充実した研修企画
年度重要テーマ研修、金融機関交流会、巡回監査再構築プロジェクト、その他各委員会・支部が主催する数えきれないほど、そして充実した研修が地域会の活性化へと培わ  れていきました。

③社会の納得活動
経営者保証に関する取扱いの変更を機会に各地域金融機関の融資部・審査部との実務者協議会を通じて、金融機関の融資マニュアルに「TKC」「書面添付」「MIS(TKCモニタリング情報サービス)」の文言が記載される等、書面添付とMISの理解と浸透が深まりました。のべ634人(京滋会)の行職員が受講した行職員研修会、金融機関交流会を通じてTKCの理解が支店の現場へも広がりを見せています。昨年の金融機関交流会では、金融機関がTKC会員に求めるものはMIS・書面添付よりも「巡回監査」であるとの多くの声をいただき、社会に対するTKC理念の浸透が年々前進していると実感しています。
また、金融機関のみならず、書面添付の実践実績は課税庁に対する理解も深まり、昨年からは大阪国税局長との定期面談が実施されています。

④巡回監査士の輩出
3年間で81名合格者(在籍264名)を輩出することができました。巡回監査士の増加は地域会全体の経営基盤の強化を意味します。未来につながる運動であります。

⑤会員増強
3年間で新たに42名の会員が京滋会の仲間となりました。

<課題>
3年間の具体的活動により新たな課題も生まれてきました。これから共に取り組んでいきましょう。
①中小会計要領チェックリスト、書面添付、記帳適時性証明書提供を標準としたMISの実践
②月次試算表提供サービスの利用件数拡大
会員の実践、金融機関への理解の促進により、今やMISは中小企業金融を支えるインフラとなり、税理士と金融機関との連携強化につながっています。今後は月次決算というTKCの強みを確実に発信し、「信頼できるTKC会計人」「信頼できる決算書」という認識を定着させていきましょう。

優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する(TKC方式の自計化の推進)

<成果>
①制度対応(電子取引・インボイス)の対応完了
巡回監査率が高い事務所は、インボイス制度導入後も早期決算完了体制が維持されています。
②TKC方式の自計化の大きな推進
 (3年間で1,460社増加
令和6年11月末現在を記載
TKCビジネスモデルのインフラである自計化が推進されたことは、これからの運動に繋がる重要な成果です。
③関与先のDX対応のスタート
FXクラウドシリーズ・銀行信販データ受信機能・証憑保存機能の普及により、関与先のDX対応のスタートを切ることができました。

<課題>
FXシリーズ導入後は次の段階に進んでいく必要があります。会員事務所ごとにステップを踏み、階段を登っていきましょう。
①記帳代行からの脱却
(関与先で仕事を完結する事務所体制の構築)
②DX対応を更に進めるためのTKCシステムの機能の活用
③従来版からFXクラウドシリーズへの移行
④連携・自動化への対応
⑤OMSを活用した事務所経営基盤の強化
⑥TKCシステム活用による生産性の向上と高付加価値化
TKCシステムを活用することは事務所体制そして業務フローを変革し、体質改善に繋がっていきます。目指すところは、税理士業務の完璧な履行、関与先の永続的発展、そして事務所の生産性の向上と高付加価値化です。TKCシステムのフル活用に挑戦し、共に目指していきましょう。

租税正義の守護者となる(TKC方式の書面添付の推進)

<成果>
①書面添付実践件数、実践事務所数の大幅な増加
この大きな推進はTKC理念の理解と浸透が前進した成果であると考えます。先達会員の叡智と努力がこの3年間で実を結びました。
②書面添付の様式改正、記帳適時性証明書の電子申告同時提供、全国の国税局長との定期面談、書面添付制度の学術的研究の開始
全国会では書面添付に関して、社会の納得活動により様々な道が開かれてきています。このことは必ずや職業会計人の運命打開へと繋がっていくと確信しています。

<課題>
①巡回監査による品質の向上
事務所の体質改善と職員の品質管理
②業務品質向上による高付加価値事務所の構築
③巡回監査士の更なる育成
巡回監査体制の構築、職員の錬成を通じて、租税法律主義における税理士業務の完璧な履行、そして高付加価値事務所を目指していきましょう。

黒字化を支援し、優良企業を育成する(巡回監査と経営助言)

<成果>
①研修を通じた巡回監査と経営助言の重要性の理解と浸透
年度重要テーマ研修の講師(TKCの先頭集団)の共通した特徴は、巡回監査を実践し、経営助言領域での業務を標準業務としていることです。研修等を通じて巡回監査と経営助言の重要性の理解は浸透し、少しずつその実践が進んでいると思います。しかしながら経営助言業務は巡回監査による経営者との対話、つまり巡回監査体制が構築されていないとその実践は継続されません。言い換えれば巡回監査体制が構築されていれば自動的に経営助言業務は実践されていきます。
巡回監査体制を構築し、経営助言領域で関与先に信頼され、頼りにされる事務所づくりに挑戦していきましょう。
②巡回監査体制再構築プロジェクトによる実践職員の育成と輩出
3年間で200名の職員がPJ研修を受講し、巡回監査を実践すべく関与先の現場で奮闘いただいています。地域会はこれからも巡回監査を実践する職員を育成していきます。

<課題>
課題はただ一点、巡回監査体制(月次決算体制)を所長の実践意思と職員の実践で実現すること。であると実感します。
①経理指導の実践、巡回監査機能の活用
②会計での経営の見える化、継続MASによる社長との対話と思いの共有、業績管理機能の活用
③継続MASによる計画の策定、決算検討会の開催
④黒字化支援、BAST優良企業の育成と関与先との目標の共有
⑤経営リスクに対する対策指導の標準業務化

終わりに

税理士業界はデジタル化の加速と少子化による人材難という大きな問題に直面しています。デジタル化が推進すれば、転記作業がなくなります。つまり現在の事務所内で行う業務が消失していきます。職員の活躍する場を事務所の中から関与先へ提供し、そして同時にデジタル化を踏まえた高付加価値業務を職員に提供しなければなりません。人材難は優秀な職員の離脱を意味します。これらの問題を乗り越えるキーワードはデジタル化、職員のやりがい・誇り・待遇・成長です。TKCで言い換えると、デジタル化・巡回監査を基本とした4大業務の同時提供・職員研修・生産性の向上と高付加価値事務所の構築です。
本年より全国会はこの問題に真正面から取り組みます。
「会計事務所の経営革新」、3年間で培った成果を新たな運動方針にぶつけていきましょう。所長の実践意思で新たな施策に挑戦し、事務所の課題を無いものにしていきましょう。そして職員が生き生きと働き、関与先から信頼され、頼りにされる事務所を作っていきましょう!